香の力
香が地球上に初登場したのは、紀元前3000年ごろと言われています。人類が最初に嗅いだ香は、火を使うことで発生する煙から漂う香だったとされています。現に香を意味するPerfumeはラテン語のPer Fumumから来ており、その意味が“煙から立ち昇る”であることからもうかがえます。
この時の体験は、その後もずっと人々の香体験に息づいていきます。日本で身だしなみや品位を現す“お香を炊く”という行為に、原始の形がよくあらわれていますよね。さらに紀元前6000年ごろ書かれたとされるキリスト教の聖典である聖書には、神へ捧げる燔祭として、初子の雄の子羊や初物の作物を神にささげる方法として、火にくべて煙を天に登らせ、いい香を神に嗅いでいただく事により、神の怒りを静めていたという記事が、たびたび登場しています。
こうした宗教における香の活用から発展して、香料は神聖なものであり、悪を排除するという発想から、エジプトではミイラの防腐剤、神の供え物の防腐剤、など単に香を嗅ぐだけではなく、さらに実用的なものとして人々の間へ浸透していきます。香は時として国運を左右する重要なアイテムとして利用されるようになりました。香の力を最大限に生かして権力を掌握していった歴史的人物と言えば、クレオパトラをまず上げることができるでしょう。
毎日大量の香成分を含ませたお風呂に入浴し、自身の体の香を欠かさずにいたとされていますし、ローマの時の権力者の心を虜にする手段としても、香の効能を最大限に利用していました。こうした香の威力は、いずれローマを経てヨーロッパ中に伝わっていきます。
さらに日本では、推古天皇の三年(595年)の日本書紀に、仏教文化と共に、祭具の一つとして柄香炉(えこうろ)などの香具が伝えられていることが記されています。香は、いつの時代でも、わたしたちの心身に強い影響力を与えながら、わたしたちの生活になくてはならないものになっていたのですね。